どの発明を特許申請するか?
特許戦略からみた発明
特許をとるか、ノウハウとして秘密にしておくか
発明を保護するために、必ずしも特許をとる必要はありません。発明をノウハウとして隠しておく、という方法もあります。ただし、偶然、他人が同じ発明をした場合には、他人は実施できます。また、ノウハウが流出してしまうと、他人は実施できます。
製品を販売した後でも、構造が解析しにくかったり、製造方法の特定が困難であったりするような場合には、ノウハウとして保護することもできます。一方、製品を販売すると、構造も明らかになってしまうような場合であれば、特許をとるべきでしょう。
特許申請(特許出願)をすると、出願から18ケ月後には出願公開公報が発行されて発明が公開されます。これによって、発明の内容が他人に知られるようになります。知られるようになる代わりに、特許をとれば法律によって発明を保護することができます。他人は実施できません。
特許戦略
「いい技術(発明)を思いついたから出願しておく」というスタンスもOKだとは思います。しかし、特許の活用を考えると、より戦略的に特許申請をしたほうがよいでしょう。守りの権利・攻めの権利の考え方を覚えておいてください。
守りの権利
守りの権利とは、自社の事業を守る権利です。言い換えると、自社の重要な技術の特許です。自社の重要な技術ですので、徹底的に思想化して、広い権利をとるように心がけることが重要です。さらに、改良発明の特許をとったり、他社が実施しそうな周辺技術の特許をとったりすることも重要です。
攻めの権利
攻めの権利とは、自社の脅威となる競合他社を攻めるための権利です。たとえば、競合他社が強力な特許を持っていると仮定します。そうすると、自社が実施するためには競合他社とライセンス交渉をすることになります。ところが、もともとライバル関係にあるため、ライセンス交渉は困難です。そこで、ライセンス交渉を有利にすすめることを目的として、他社が実施しそうな技術を先に出願して特許をとっておくのです。そのためには、他社の技術を注視しておく必要があります。
特許になるための条件
特許法からみると、発明が特許になるために、以下のような条件を満たすことが必要です。これらの条件を「要件」と呼びます。
- 産業として実施できるか:人間を手術する方法などの医療行為で特許をとることはできません。明らかに実施できない技術では特許をとることはできません。
- 新しいかどうか:今までにない新しいものでなければ特許を受けることができません。出願した時点で判断されます。
- 容易に考え出すことができないか:従来から存在する技術の寄せ集めや一部を置き換えただけの発明は特許を受けることができません。
- 先に出願されていないか:同じ特許権が併存することはできないため、競合した場合には早い者勝ちになります。
- 公序良俗に反しないか:公益的見地から特許を受けるべきではありません。
- 申請書類の記載が規定どおりになっているか:第三者が実施できる程度に記載する必要があります。さらに、技術的範囲が明確である必要があります。