特許とは
知的財産権の種類について
知的財産権には、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、商標権、著作権などがあります。このうち、特許権、実用新案権、意匠権、商標権を特に産業財産権ということがあります。
特許権や実用新案権は、技術的な思想である発明や考案を保護する権利です。しかし、発明をしただけで何もしないと権利をとることはできません。この点は、何もしないでも権利が発生する著作権と大きく異なります。したがって、発明をしただけでは、他人に真似されても文句はいえません。
特許をとる(特許権を取得する)ためには、特許庁に対して特許申請(特許出願)して、審査を受けたうえで登録されることが必要です。せっかく特許申請しても、だいたい半分くらいは特許庁での審査でダメになります。
なぜ特許が必要なのか?
特許制度は、発明の内容を公開する代わりに、一定期間だけ発明を独占できる権利を与える制度となっています。つまり、特許を申請してから、1年6月後に申請書類は公開されるのです。このように公開することは、技術を進歩させることを意図しています。申請書類が公開されると、公開された技術を見た人は、その公開された技術の上にさらに技術を積み重ねることができますよね。
特許権は、発明を公開する代償として付与されるものです。
特許権
特許とは、特許権のことです。特許権は、「発明」を保護します。特許法では「この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」(特許法第2条)となっています。権利の期間は出願から20年です。
実用新案権
実用新案権は、「考案」を保護します。実用新案法では「この法律で「考案」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作をいう。」(実用新案法第2条)となっています。権利の期間は、出願から10年です。特許は出願から20年なので、半分になっています。
特許権と実用新案権の違い
うーん、実用新案権と特許権は似ていますねー。発明と考案を比較すると「高度のもの」という文言がない点で異なっています。しかし、実際の特許庁の審査では、「高度のもの」という文言はそれほど重要視されていないようです。
実務的には、特許との違いは、実用新案では「方法の発明」が保護されないということでしょう。また、化学物質なども実用新案で保護することはできません。
もう1つの違いは、実用新案は審査がないため、方式的な条件を満たせば、必ず登録になるということです。審査で半分がダメになって権利をとることができない特許と大きく違いますね。
特許制度の歴史
特許はどの国から始まった?
現在のように制定された法令でもっとも古いといわれているのは、イギリスの専売条例です。1624年に議会によって制定されています。その後、イギリスで1852年に特許法が成立しています。明細書の提出が義務付けられるなど、現在の各国の特許法に大きな影響を与えています。
日本の特許制度
もっとも古い特許制度として、明治4年に制定された専売略規則があります。しかし、種々の事情からこの規則は翌年に廃止されています。その後、明治18年に、専売特許条例が制定されます。当時は、現在と異なり、先発明主義が採用されていたようです。明治18年は日本の特許制度誕生の年とされており、公布の日である4月18日は、発明の日とされています。現行法は、昭和34年に全面改正されたものです。
特許でできることについて
特許をとると、何ができるのでしょうか?
- 他社に対して「もし真似すると権利侵害になりますよ!」とけん制することができます(警告)。
- 特許を侵害された場合には侵害をやめるように警告できます。警告してもやめない場合は、提訴して侵害を差止めたり(差止請求権)、損害賠償を請求したりできます(損害賠償請求権)。
- 第三者にライセンスを許諾し、使用料(ロイヤリティ)を得ることができます(実施権)。
- 自社の高い技術力をアピールすることができます。
- 金融機関からの融資の査定で高い評価を得ることができます。
ライセンスとは、特許されている発明を他人に実施させることをいいます。せっかく特許をとったのになぜ他人に実施させるのか?という疑問が生じるかもしれないですね。実施させる理由としては、実施させる代わりにお金(実施料)をもらう、ということがあります。同業他社どうしが、互いの特許をライセンスし合う、いわゆるクロスライセンスも多くみられます。
特許でできないことについて
特許をとったとしてもできないことはありますか?
- 特許をとっただけですぐに大金持ちになることは難しいと思います。特許をとると、他人が真似できなくなるのですが、製品に魅力がなければ儲からないでしょう。もちろん、とても優れた画期的な発明であれば、大金持ちになる可能性はあります。発明次第というところでしょうか。
- 日本で特許をとっても外国では通用しません。外国でも特許をとっておく必要があります。
- 特許権は出願から20年の期間に限られるので、それ以後は他人が自由に使えるようになります。
どうやって特許を取るのか?
所定の様式で記載した「特許願」を特許庁に提出します。
提出した書類の様式が特許庁で審査されます。
出願の内容は「公開公報」によって公開されます。出願して1年6ヶ月経つと公開されます。
出願審査請求をしなければ審査されません。出願日から3年以内に出願審査請求しないと取り下げになります。
特許庁は出願審査請求を受けると審査を開始します。審査は特許庁にいる審査官が1人で行います。
審査において要件を満たしていないと「拒絶理由通知書」が送付されます。 ほとんどの出願では拒絶理由通知書が送付されます。
拒絶理由通知に対しては反論内容を記載した「意見書」や「補正書」を提出します。拒絶理由通知書が届いた日から60日以内に提出しなければなりません。
審査において要件を満たしていると「特許査定」が送付されます。
特許料を納付すると設定登録されて特許権が発生します。
特許権の内容は「特許公報」によって公開されます。設定登録から約1か月後に公開されます。
まとめ-結局のところ特許とは-
特許とは、知的財産権の1つで、技術的な思想である発明を保護するものです。
特許をとるためには、特許庁に書類を提出したうえで、審査を受けなければなりません。
めでたく特許をとれると、他人が真似することはできなくなります。ただし、特許をとったからといって、急に大金持ちになることはできません。