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特許申請書類の書き方

特許申請書類の内容

特許申請書類として5つの書類(願書・明細書・特許請求の範囲・図面・要約書)を特許庁に提出する必要があります。

  • 願書:願書は出願書類の顔です。発明者や出願人を記載します。
  • 明細書:発明の具体的な内容を記載します。特許請求の範囲をサポートします。
  • 特許請求の範囲:特許権をとりたい範囲を特定します。最も重要な書類です。
  • 図面:構造や動作をわかりやすく表現します。明細書の中で参照することができます。
  • 要約書:発明の内容を簡潔に表現します。

five documents上に挙げた5つの特許申請書類には、それぞれ細かい書式(形式面の書き方)が規定されています。書式については他のサイトでも解説されていますので省略します。以下、申請書類の中でも重要な特許請求の範囲明細書を中心として、具体的にどのように書くのか、書き方について説明します。なお、以下はあくまで個人的な見解です。内容についての責任は負いかねます。
(*要約書は権利範囲に関係ないので、割と適当でもかまいません。請求項1をわかりやすく書き直すことが多いです。要素に符号をつけます。)

願書

written application用紙はA4サイズの白い紙を使います。あまり文字が多くならないように、1行40文字、1ページ50行以内とします。文字は、黒で10~12ポイントとします。文字の周囲に設ける余白は上6cm、左右及び下に各々2cmをとり、左右の余白は各2.3㎝を超えないようにします。願書の左上に特許印紙を貼付します。特許印紙は、大きめ郵便局で取扱っています。無い場合は、注文すれば仕入れてくれると思います。ちなみに、特許事務所の場合には、特許印紙を貼った予納書という書面をあらかじめ提出しておきます。

【出願日】の欄には、特許庁へ持参する日を記入します。郵送する場合は、郵送する日を記入すればOKです。郵送の場合、消印の日に特許庁に到達したものとみなされます。

【発明者】の欄には、実際に発明した個人の氏名を記入します。何人かで協力したような場合ですと、発明者は複数となります。個人発明家の方ですと以下のようになります。「【住所または居所】東京都千代田区岩本町2丁目19番9号 【氏名】帯包 浩司」。

【出願人】の欄には、個人又は法人の名称を記入します。法人の場合には代表者も記載する必要があります。【識別番号】は、初めて出願する場合には付与されていません。したがって記載不要となります。実際に出願すると特許庁から識別番号が記載されたハガキが届きます。

特許請求の範囲

claims特許申請書類の中でも最も重要な書類です。審査の段階では、審査対象となる発明を特定する役割があり、権利化後の段階では、権利の対象を特定する役割があります。重要な書類のため、いろいろな書き方が研究され、この特許請求の範囲の書き方だけで一冊の本を書くこともできます。たとえば、以下のような書き方があります。

        

  • 書き流し型(・・・し、・・・され、・・・する、・・・。)
  • ジェプソン型(・・・において、・・・を特徴とする、・・。)
  • 要素列挙型(・・と、・・と、・・とを備える・・。)

機械系の場合には、書き方としては要素列挙型がベターと思います。要素列挙型であれば、特許庁の審査官も審査しやすく、権利化後も権利範囲が明確になるからです。また、外国への出願を視野に入れると、いっそう要素列挙型が好ましいといえます。なぜなら、要素列挙型であれば、英語への翻訳もスムーズですし、米国などの主要国の特許請求の範囲の記載手法とも一致するため、現地代理人にとってもわかりやすいからです。

要素列挙型「(・・であって、)Aと、Bと、Cとを備える・・。」という書き方について:
よく発明者様や出願人様から、「Aと、Bと、Cと」という表現がわかりにくい、というご意見を伺います。しかし、特許庁の審査官に審査しやすく、権利範囲を明確にするためには、むしろこのように書くほうが好ましいです。
例)
特許になった発明が「マイクと、スピーカと、表示部と、を備えた、携帯電話。」で、侵害が疑われる製品が「マイクと、スピーカと、を備えた、携帯電話。」であったとします。この場合、侵害が疑われる製品に「表示部」がないため侵害にならない、と明確に判断できます。

 

特許請求の範囲は、申請書類中で最も重要です!

特許請求の範囲は、申請書類の中で最も重要です。権利になった後に、特許請求の範囲の記載が権利範囲となるためです。また、審査過程では、特許庁の審査官は、この特許請求の範囲に基づいて審査します。したがって、できる限り、広い権利範囲となることを目指します。しかしながら、広いと特許庁の審査官に拒絶されてしまうかもしれません。どの程度の広さを表現するかは、弁理士の腕の見せ所です。

特許請求の範囲には何を記載したらいいの?

特許請求の範囲を書く前の事前準備が重要となってきます。発明者が認識している課題とは異なる角度から、発明を見ることが重要となります。つまり、発明者が認識している課題は、世の中の課題とは異なっている場合があります。具体的には、以下の2つの場合が想定されます。まず1つめは、発明者が課題と認識している点は、世の中ではすでに解決されている場合です。2つめは、発明者が課題と認識している点よりもより初歩的な課題が世の中で未だ解決されていない場合です。この場合には、発明者が認識しているよりも、広い権利範囲で特許を取ることができる可能性があります。

ここでいう世の中の課題が、どの程度のレベルなのかは、どうやって知ることが出来るでしょうか。答えは、従来技術を調べてみればわかります。つまり、特許庁の審査官は、従来技術との比較で審査しますから、先回りして自前で従来技術を調べて課題を設定すればよいのです。経験からいっても、発明者が認識している世の中の課題が、従来技術の調査結果と一致している場合はきわめて少ないです。経験の豊富な弁理士であれば、ある程度は予想できますが、予想外の従来技術があって課題を設定しなおす場合も多いです。

多項制の活用など

「多項制=タコウセイ」と読みます。特許請求の範囲には、1つだけ発明を記載するわけではありません。複数の発明を記載することが一般的です。上から順に広い範囲から狭い範囲へと発明を展開していきます。一番上の発明を記載するのが、【請求項1】です。以下、順に【請求項2】【請求項3】となります。請求項の数は、機械系の発明であれば5コくらいが普通の数と思いますが、化学系の発明では20コある場合もあります。多すぎると、審査請求料も嵩みます。

細かい注意点

特許請求の範囲は、名詞で表現します。したがって、最後に1つだけ「。」をつけます。1つの請求項の中で、何個も「。」がある請求項を見たことがありますが、好ましくありません。審査段階で「不明確である」として拒絶対象となる可能性があるためです。

よく、長~~い、特許請求の範囲(請求項)を見ますが、あまり好ましくありません。文章が長いほど、発明の範囲は限定されてしまいますから、文章は、発明を表現できる範囲で、なるべく短くするほうがよいといえます。ただし、短くしすぎると、読んで意味がわからなくなる場合がありますので、要注意です。意味が分からなくなると、審査で拒絶されてしまいます。

「~手段」という表現について

例えば、「固定手段」という表現は、特許請求の範囲でよく用いられます。一般的には、この表現によって「固定するものなら、すべてを含みますよ」ということを意味します。ただし、この表現は、万能ではありません。米国などでは、「means for -ing」という表現は、実施例に記載した内容に限定解釈されることになっています。したがって、このような表現は、できれば避けたいです。どうしても、使いたい場合には、明細書の実施例の中に、できる限り多くの具体例を列挙すべきです。

要素列挙型にはどの要素を記載すればよいか?

要素列挙型が好ましいことは上で説明した通りなのですが、ではどの要素は記載して、どの要素は記載しない、という線引きはどこですればよいのでしょうか?答えは、いわゆる「当業者(その分野の専門家)」が読んでみて、内容を理解できる程度に最小限の要素を列挙する、ということになります。ですから、当たり前の要素は、記載しなくてもよいと思います。ただし、当たり前の要素だと自分で思っていても、審査官の判断は異なる場合もあるため、少し多めに要素を列挙しておくのも1つの方法です。

明細書

description明細書には、発明の具体例や変形例などを記載します。特許請求の範囲に記載した発明を実施できるように、また、特許請求の範囲に記載した発明をサポートするように記載する必要があります。さらに、拒絶理由通知書を受け取った際に、特許請求の範囲を補正するための根拠となります。機械系の明細書の書き方を説明します。

技術分野

「本発明は(ここに発明の名称を具体的に記載する)に関する。」と記載します。
例)
本発明は、工場内で製品に付着した匂いを脱臭する脱臭装置に関する。

背景技術

背景となる技術を記載します。従来から存在している技術として、特許文献(公開公報)を調べて1つ挙げます。あまりたくさんの文献を列挙する必要はありません。記載量もそれほど多くする必要はないでしょう。1ページ程度で十分です。
例)
従来から、・・・が知られている。
この・・・は、~、~、~によって、するように構成されている。

発明が解決しようとする課題

「しかしながら、・・・」で始めます。背景技術で挙げた特許文献の技術の問題点を1~2点だけ指摘します。ついつい、たくさんの問題点を挙げたくなりますが、ぐっと抑えましょう。
例)
しかしながら、・・・という問題があった。

課題を解決するための手段

特許請求の範囲の請求項1の記載をコピーしてペーストします。請求項1をそのままペーストすると文章にならないので、途中で文章を分けたり、主語と述語を補ったりして、読みやすい文章になるように修正します。この他、明細書中で使用する語句を定義する記載をこの部分に書くこともあります。
例)
上述した課題を解決するために、本発明の(発明の名称)は、・・・である。そして、~と、~と、~とを備えている。~は、~になっている。
本明細書において、~とは、・・・と定義する。

発明の効果

請求項1の発明で達成される効果のみを記載します。請求項1による効果であることがわかるように、請求項1の特徴となる部分を記載したうえで、効果を説明します。上述した「発明が解決しようとする課題」が解決することを説明します。
例)
本発明の・・・は、~(請求項1の特徴となる部分)~によって、・・・できる、という効果を奏する。

実施例

具体的な実施例をできるだけ詳細に記載します。後々の中間処理(拒絶理由に対する対応)の段階で読んだときに、自分自身がわかりやすいように項目を立てて記載します。機械系の発明であれば、一般的に、「構成」、「作用」、「効果」に分けて記載する書き方がよいでしょう。発明のポイントに関係する構成は、しっかりと記載する書き方が好ましいです。ただし、特許権がとれた後に、権利範囲を限定するような記載は避けたほうがよいでしょう。

構成

「構成」は、構造と言い換えてもいいでしょう。物の構造を1つずつ説明していきます。
例)
「図1に示すように、AはBとCとを備える。」
「図2に示すように、Bはb1とb2とを備える。」
「b1は~である。b2は~である。」
「図3に示すように、Cはc1とc2とc3とを備える。」
「c1は~である。c2は~である。c3は~である。」
というように、全体から細部へと順に書いていく書き方がよいでしょう。さらに、代替手段が考えられる要素については、考えられるだけ列挙します。
例)
「c2は、c4又はc5であってもよい。c2がc4であれば、~の点で優れている。c2がc5であれば、~の点で優れている。」

作用

動作や結果などの時間経過を伴う情報は、構成だけでは説明しにくいため、作用として記載します。また、構成から想起しにくい動作や結果を、他の人にもわかるように記載します。
例)
次に、実施例の~の作用について記載する。
まず、~は、~から~を受け取る。次に、~は、~へ、~を伝送する。~を受信した~は、~に~を転送する。~を転送された~は、~及び~に、~を指示する。これによって、~は、~できるようになる。

効果

1つ1つの請求項が奏する効果を列挙します。全体のまとめです。
例)
次に、本実施例の効果を列挙して説明する。
(1)本実施例の~は、~である。そして、~となっている。このため、~できる。
(2)また、~によって、~できる。
(3)さらに、~のため、~できる。

産業上の利用性

この項目は、明細書に記載する必要はありません。ただし、まったく新しい発明の場合には、記載することもあります。

符号の説明

使用した符号をすべて説明する必要はありません。特許請求の範囲に記載した発明と関係がある符号のみでOKです。
例)
1     脱臭装置
2     ダクト
3     ファン
4     活性炭

図面

drawings図面を明細書と合わせて参照することによって発明をわかりやすく表現することができます。図面の書き方を説明します。重要な要素(部品)には符号をつけます。符号のつけ方として、全体を1桁(例えば「2」「5」など)とし、部品を2桁(「21」「50」「51」など)とすると、要素の親子関係がわかりやすくなります。同じ種類の要素がたくさんあるときには、いくつかの要素に同じ符号をつけます。また、構造ではないものはアルファベットの符号をつけたりします。符号の引き出し線は交差させないようにしましょう。中心線は特に必要ありません。図面に記載されない要素については明細書中で符号をつけないほうがよいでしょう。一般に、点線・・・隠れ線、一点鎖線・・・中心線など、二点鎖線・・・仮想線とします。図面には、斜視図、分解図、分解斜視図、断面図、平面図、正面図、背面図、側面図などを用いることが多いと思います。制御系ではブロック図、フローチャートなども用います。

図面作成における注意点

  • 図面が2つ以上あるときには、発明の特徴をもっともよく表す図を【図1】とします。
  • 図面の番号は連続してつけます。例)【図1】の次は【図2】とします。
  • 同じ部分には同じ符号をつけます。例)【図1】で(10)を「机」とした場合には、【図2】で(10)を「イス」とすることはできません。
  • 断面図において、切断した面には平行な斜線をひきます。
  • 斜視図などにおいて凹凸を表すために陰影をつけることができます。
  • 中心線は、特に必要がある場合のほかは、引いてはいけないことになっています。
  • 施行規則では、図の主要な部分の名称は符号とともに記入することとなっていますが、しないほうがよいです。国際特許出願では、図面に不要な文言を記入することが禁止されているためです。

要約書

abstract要約書は割と適当な書き方でもかまいません。なぜなら日本では権利範囲に影響しないためです。ただし、米国では要約書を権利範囲の解釈に用いた判例があります。請求項1の文章をわかりやすく書き直して図面(選択図として発明をもっともよく表す図面を1つ選びます)の符号をつけて完成です。200字以上で400字以下とすることが推奨されています。

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