審査基準に実際に記載されている留意事項
審査基準に実際に記載されている留意事項
審査基準を理解すれば特許を取得しやすくなる!
前回・前々回に続いて、今回も審査において最も重要度の高い特許の「進歩性」の審査基準について、どのような視点で対応すればクリアできるかについて解説します。今回の「その3」では、「進歩性の判断における留意事項」について解説します。
この「進歩性の判断における留意事項」は、「審査官が注意すべき事項」について説明しています。進歩性を主張する際に参考になるので、ぜひ理解しておきましょう。
進歩性の判断における留意事項
審査基準には、「進歩性の判断における留意事項」として次の6つの要素が挙げられています。
- 後知恵について
- 主引用発明について
- 周知技術について
- 従来技術について
- 物自体の発明と製造方法の発明について
- 商業的成功について
以下では、これらの6つの要素について説明します。
後知恵について
「後知恵」というのは、「審査する時点では、当業者が容易に想到できたように思えてしまう」ので、その点に注意して審査すべき、ということです。出願人側から見れば、反論として、例えば「・・は、いわゆる後知恵であって、当業者が容易に想到できるものではありません。」となります。
主引用発明について
主引用発明として、遠い技術分野の発明を引用した場合は、より慎重に論理付けすべきである、ということです。出願人側から見れば、反論として、例えば「全く異なる分野であり・・・。したがって、動機付け(論理付け)がない。」となります。この場合は、技術分野が異なることを主張するだけでなく、動機付け(論理付け)ができない理由までを論理的に丁寧に主張したほうがよいです。
周知技術について
周知技術であるという理由だけで、論理付けができるか否かの検討を省略してはならない、ということです。拒絶理由通知では、周知技術である、というだけで論理付けが省略されることが時々あります。その場合には、周知技術であるという認定にしっかり反論したうえで、論理付けが省略されている点を主張することができます。
従来技術について
明細書中に従来技術として記載されている技術については、引用発明とすることができる、ということです。したがって、明細書中に従来技術として記載する文献は慎重に選択したほうがよいでしょう。
物自体の発明と製造方法の発明について
物自体の発明が進歩性を有している場合には、その物の製造方法及びその物の用途の発明も、原則として、進歩性を有している、と判断されます。製造方法自体の進歩性は問われることなく、進歩性「あり」と判断されるということです。
商業的成功について
販売実績が好調である等の「商業的成功」があれば、進歩性「あり」とする際の事情として考慮してもよい、ということです。ただし、当たり前ですが、この「商業的成功」は技術的特徴に基づくものである必要があります。つまり「宣伝が上手だったからたくさん売れた」という場合には「商業的成功」は考慮しなくてよい、ということです。したがって、「商業的成功」をアピールする場合には、同時に、技術的特徴に基づくものである点も主張したほうがよいでしょう。
まとめ
今回は、特許・実用新案審査基準において「進歩性の判断における留意事項」について説明しました。繰り返しますが、主張する際には、決して独りよがりな主張になってしまうことがないように、審査官の指摘をしっかりと受け止めたうえで論理的な反論をすることが重要です。
拒絶理由の対応でお困りでしたら、遠慮なくご相談ください。
審査基準については以下の記事(その1;その2)も参考にしてください。