初心者でもわかる!特許の意見書の書き方のポイント
初心者でもわかる!特許の意見書の書き方のポイント
特許を取得するまでには、拒絶理由なしで登録となる割合よりも拒絶理由を経て登録となるケースの方が多くなります。
拒絶理由への対応には、意見書や補正書での対応が必要になるため、この意見書で審査官に主張を認めてもらうことが特許登録へ重要になります。
今回は、拒絶理由対応時の意見書の書き方のポイントについて、初心者の方にもわかりやすく説明させていただきます。
引用文献の認定
まず、審査官が提示した引用文献に記載されている技術が、本願発明の発明構成要素と同じなのか異なるのかを確認する必要があります。
審査官も常に完璧と言うわけではなく、一見似ている発明が書かれているけど、実際は異なる発明であったりすることもあります。拒絶理由を構成する文献として適切なのかどうか、を自分でも再確認する事が重要な工程になります。
例えば、本願発明が(A+B+C)で、引用文献1に(A+B)、引用文献2に C の構成が記載されていて引用文献1と引用文献2を組み合わせることで容易に本願発明を発明できる、として29条2項(進歩性)の拒絶理由が通知されていたとします。
本願発明 :A+B+C
引用文献1:A+B ← 審査官の認定内容
引用文献2:C ← 審査官の認定内容
その場合、本当に(A+B)や C の構成が記載されているのかを確認することが重要です。引用文献に書かれている技術が、実際にはA+B’やC’といった少し違う技術が書かれていれば、(A+B)と(A+B’)の違いや C と C’ の違いを説明することで本願発明との違いを説明できる可能性も出てきます。
組み合わせができるのか
次に、(A+B)と C の構成が記載されていたとしても、(A+B)と C を組み合わせることが容易かどうか、を検討することも大事なことです。(A+B)に C の構成を組み合わせることに阻害要因(引用文献自体に内在する原因)があるため、組合わせることが容易ではない、と言える場合は、その点を主張することが有効な場合もあります。
さらに、最近では、(A+B)と C を組み合わせる「動機付け」が「ある/ない」という主張が特に重要です。拒絶理由通知書に、組み合わせる「動機付け」が書かれていない場合には、この点を主張します。また、拒絶理由通知書に「動機付け」らしいことが書かれていたとしても、反論できないかどうか、しっかり検討しましょう。阻害要因とまでは言えなくても、動機付けがないと言えれば、組み合わせができないことを主張できます。
有利な効果がないか
さらに、組み合わせができたとしても、本願発明の方が有利な効果があれば、この点を主張できます。
具体的には、審査官が容易に想像できると指摘している場合でも、
①誰も予測できないような異質な効果がある場合
②予測できる同種の効果であっても、量的にきわめて大きい効果がある場合
には、これらの点を主張することで審査官の指摘を覆すことができます。
補正書も合わせて検討
現状の請求項で引用文献と優位な差が出せそうにない場合は、請求項を補正することを検討します。この補正では、本願発明の課題に関連するポイントで補正(限定)できれば、課題にからめて本願発明に特有の効果を主張しやすくなるためベストです。
補正は出願当初の明細書、特許請求の範囲等に記載した内容の範囲内でのみ可能で、出願をしたときに明細書、特許請求の範囲等に記載していなかった内容を新たに追加することはできません。
拒絶理由で引用される文献に対して様々な限定を可能とするためにも出願時の明細書をしっかり記載し、応用例や変形例も具体的に記載しておくことで、拒絶理由対応時に有効な限定要素になる可能性が高まるので、権利化の可能性を高めるためにもしっかりと明細書を作っておきましょう。
また、複数の従属項を記載していて、そのうちのいずれかに拒絶理由が無い場合もあります。その際は拒絶理由が来ていない請求項の内容に限定する補正をすれば、拒絶理由を回避できるので、限定要素の候補の一つとして確認しましょう。
補正をする場合には、補正の根拠となる具体例な段落や図面を意見書で説明し、引用文献からは容易に想到できない発明であることを主張します。
一方で、大きな限定を加えれば特許を取得することはできるかもしれませんが、大きく限定された請求項とした場合、権利範囲としては狭いものになってしまいます。補正をして限定する場合は拒絶理由を回避できる程度の限定にするようにして、権利範囲を狭めすぎないようにすることにも注意していきましょう。
また、審査官に面談(電話や対面での打合せ)を申し入れることもできます。面談をすれば特許がとれるという訳ではありませんが、面談をすることによって、審査官に発明の微妙なニュアンスを伝えることができたり、審査官の心象を聞いたりできるため、面談をすることはきわめて有効です。
加えて、面談では補正案をチェックしてくれて、心証を伝えられる場合もあります。拒絶理由を1回分だけ余計に通知されたようなイメージになります。特に重要な案件では、審査官との面談をした後に、意見書や補正書を書くという方法も検討してみても良いかもしれません。
ただし、拒絶理由への応答は期限(通常は通知された日から60日)があるものなので、ギリギリになって検討すると充分な検討が出来なくなりますので、余裕を持ったスケジュールで意見書、補正書を準備しないといけません。(期限ギリギリになった場合は、費用は少しかかりますが申請によって1か月単位で延長できます。)
まとめ
特許を権利化するうえで大事な意見書や補正書の書き方について書かせていただきました。引用文献の認定をしっかりとして、的確な意見書や補正書によって拒絶理由に対応することで、権利化の可能性が大きく上がるので、適切な意見書かどうかをしっかり確認出来るようになって効果的に権利を取得していきましょう。
そもそも「特許申請書類をどのように書けばいいのか」わからない方は、以下の記事をご覧ください。