弁理士とは
弁理士とは
はじめまして、東京都中央区京橋で「弁理士」やってます!皆さんは「弁理士」(べんりし)をご存知でしょうか?「弁理士」とは、一言でいうと、「特許などの知的財産の専門家」です。そして、「弁理士」は、弁護士や公認会計士や税理士と同じように、試験に合格してはじめて登録できる「国家資格」(割と難関)です。
弁理士制度を定める法律として「弁理士法」があります。弁理士法は、弁理士制度を定めて弁理士を活用することで、経済及び産業の発達に資することを目的とします。弁理士法の歴史はたいへん古く、明治32年の特許代理業者登録規則にその起源をみることができます。
そして、弁理士の仕事の内容は、弁理士法の4条、5条、6条、6条の2に具体的に書かれています。以下に各条文の内容をまとめてみましたので参考にしてください(わかりやすさを重視したため、正確でない箇所があります)。
- 第4条:1項は弁理士の本来業務を定め、2項は紛争処理業務を定め、3項は相談などの標榜業務を定めています。弁理士は、特許や意匠や商標などの特許庁における手続などを代理できます。また、弁理士は、特許や意匠や商標などの訴訟(経済産業大臣が指定するものに限る)を代理することもできます。さらに、弁理士は、相談業務もできます。
- 第5条:補佐人業務について定めています。弁理士は、特許や意匠や商標などの訴訟について、裁判所で補佐人として弁護士とともに出頭することや、陳述や尋問をすることもできます。
- 第6条:審決取消訴訟代理について定めています。弁理士は、審決取消訴訟の訴訟代理人となることができます。この場合は、単独で訴訟代理人になれます。
- 第6条の2:特定侵害訴訟代理について定めています。弁理士は、特定侵害訴訟代理業務試験に合格して「付記」の登録をすれば、特定侵害訴訟について、弁護士といっしょに訴訟代理人となることができます。弁護士といっしょに代理することが条件となっています。
どうして弁理士が必要なのか?
特許権や商標権を取るためには、決められた書式の申請書類(出願書類)を作って、特許庁に提出する必要があります。さらに、特許庁の審査を通過させるためには、特許庁の審査官と書面を通じてやり取りすることもあります。ただし、申請書類の作成や審査官とのやり取りは、かなり専門的です。専門的な知識がないと、いくら発明自体が素晴らしくても特許を取ることはできないのです。そこで、国が弁理士という資格を作って、特許権や商標権をとろうとしている人をサポートさせている、というわけです。
弁理士バッジについて
弁理士試験に合格し、所定の研修を受けて登録されると、弁理士バッジが送られてきます。裁判所などに行く際には、弁理士バッジを付けていくことで、入館手続きが楽になるようです。弁理士バッジは、正確には「弁理士徽章」(べんりしきしょう)と呼びます。
弁理士バッジの形状(16弁の菊花の中央に五三の桐花をあしらった形)が採用された理由は「菊花の図形は『正義』を表わし,桐花は『国家の繁栄』を表わす。
菊花が正義を示すのは,その形体が正しく,放射状をあらわしているから,太陽すなわち日輪を象徴するものとされ,至高・至尊とする印度および佛教思想にある。
次に,桐花は『韓史外伝』によると,聖主の出現をまって飛来する瑞鳥の集る樹で,王者を祝福する事,それはとりもなおさず国家,国民の繁栄を意味する。」ということらしいです。
弁理士の日々の仕事
弁理士の仕事の大部分は、デスクワークです。特許文献を読んでいたり、発明提案書を読んでいたり、拒絶理由通知書を読んでいたり、パソコンで書類を作ったりしています。多くの弁理士は、クライアントと特許庁との間に入って、特許や意匠や商標の手続きの代理業務を主な業務内容としています。また、大手の渉外事務所では、外国の代理人や外国の法人の代理案件を扱うことも多く、英語と日本語の間の翻訳作業も必須となっています。
相談業務(打ち合わせ)
発明者(クライアント)が、新しい発明などを思いついたときに、弁理士に、メールや電話などで連絡があります。そして、実際に面談して弁理士が相談を受けます。(事務所によっては、面談せずに書類作成をすることもあるようです。)
弁理士は、技術などを理解して特許権や意匠権のうちのどの権利を取得したらいいのか、どのような権利範囲が適切か、などを判断してクライアントにアドバイスします。
面談(打ち合わせ)は、次に説明する申請書類の作成の準備という側面もあります。通常は、1つの発明について1時間くらい割きます。
限られた時間で効率よく質問したり技術を把握したりするために、事前に発明に関する資料を送付してもらって、よく読んで打ち合わせに臨みます。打ち合わせでは、どの図面を用いるべきか、発明者は誰か、といった詳細事項も聞いておきます。
申請書類の作成業務
案件によって大きくバラつきますが、1つの発明の明細書を作成するのに、だいたい3日~5日程度かけることが普通だと思います。3日かかるといっても、ずっとパソコンのキーボードを叩いているわけではなく、文献を読んだりして発明を把握する時間のほうが長いかもしれません。だいたい10000字くらいは入力します。
5つある申請書類のうちで、最も重要な書類は「特許請求の範囲」という書類です。多くの弁理士は、この特許請求の範囲をはじめに書き上げ、その後に図面や明細書を書いていきます。要約書は、権利範囲に影響しないことになっているので、あまり時間をかけません。
中間対応業務(いわゆる中間処理)
申請書類の作成に次いで重要度が高く、多くの時間を割く業務が拒絶理由対応-いわゆる中間処理-です。特許を申請すると、特許庁の審査官という人に審査してもらい、「合格」ということになって、はじめて特許権を取ることができます。
ただし、いきなり「合格(専門的には「登録査定」あるいは「特許査定」といいます)」になることはなく、ほとんどの場合、「不合格」の返答をもらいます。この「不合格」の返答のことを「拒絶理由通知」といいます。この「拒絶理由通知」というのは、A4で2-3ページくらいの分量の書面です。
拒絶理由通知には、単に「不合格である」と書いているわけではなく、どのような理由によって不合格と判断したのか、ということが書かれています。そして、この拒絶理由通知に対する対応のことを「中間対応」「中間処理」などと言ったりします。
出願人の代理人である弁理士としては、拒絶理由通知をしっかりと読み込み、どのように対応することが出願人の利益になるのか、ということを検討することになります。
具体的には、まず拒絶理由通知書それ自体を読み、次に拒絶理由通知に引用されている文献を読みます。さらに、代理している出願自体も、読み直します。申請書類(明細書)を書いたのは自分なのですが、書いてから時間が経っていることも多く、細かい部分は忘れているため、もう一度しっかりと読み直すことになります。
もちろん、代理人は出願人の意向に沿った対応をすることが大前提なので、出願人の意向を聞きながら対応を考えることになります。日本人の出願人であれば拒絶理由通知から60日以内、外国人であれば3か月以内に審査官に返答する必要があります。具体的には、意見書や補正書を提出することで、審査官に反論していくことになります。
外国関係の業務
弁理士は、日本国内の仕事だけをするのではありません。特許権や商標権などの知的財産権は、国ごとに取得しなければならないので、日本で特許権を取得した発明を外国でも申請(出願)するケースも多くあります。
そうすると、外国の弁理士(「現地代理人」といったりします)とやり取りする機会も必然的に多くなってきます。英語を日本語に翻訳したり、日本語を英語に翻訳したり、日常的に英語を使っています。
ただし、他国でも法制度はある程度は日本と共通していますし、使用する英単語も決まった単語ですので、高度な英語力が必要というわけでもありません。TOEICでいえば700点あれば十分のレベルだと思います。
弁理士業界の現状
弁理士の人数
平成26年に10000人を突破しました。令和4年12月31日現在で、弁理士は12116人います。
弁理士の分布
弁理士の地方ごとの分布状況を見ると、北海道に66人、東北に104人、関東に9517人、東海に1116人、北陸に133人、近畿に2581人、中国に153人、四国に85人、九州に286人、国外に116人いるようです。関東に集中していることがわかりますね。なお、合計すると前述の12116人を超えますが、これは1人の弁理士が複数の所在地に登録しているためです。
- 関東地方の弁理士:9517人
- 近畿地方の弁理士:2581人
- 東海地方の弁理士: 1116人
- 九州地方の弁理士: 286人
- 中国地方の弁理士: 153人
- 東北地方の弁理士: 104人
- 北陸地方の弁理士: 133人
- 四国地方の弁理士: 85人
- 北海道地方の弁理士:66人
- 国外の弁理士 :116人
関東(東京)の弁理士
関東では東京都の9517人がダントツで多いです。
東京(千代田区)の弁理士
東京都では、特許庁がある千代田区の弁理士2423人が最も多く、港区の弁理士1718人、中央区の弁理士850人、新宿区の弁理士688人と続きます。ちなみに、私ども特許業務法人パテントボックスは、中央区の京橋というところにあります。ライバルが多いということですね。
- 千代田区の弁理士:2423人
- 港区の弁理士: 1718人
- 中央区の弁理士: 850人
- 新宿区の弁理士: 688人
- 品川区の弁理士: 222人
弁理士試験
試験の概要
弁理士になるためには、毎年1回ずつ実施される弁理士試験に合格する必要があります。試験は、1次試験(マークシート、5月下旬)、2次試験(記述式、7月)、3次試験(面接、10月下旬)の3つです。ここ数年は、合格率が高い傾向にありましたが、平成26年度に一転して6.9%と大きく低下しました。受験生にとっては厳しい結果となりますが、この傾向はしばらく続くかもしれません。
- 2018年 合格者数260人(7.2%)
- 2019年 合格者数284人(8.1%)
- 2020年 合格者数287人(9.7%)
- 2021年 合格者数199人(6.1%)
- 2022年 合格者数193人(6.1%)
試験の難易度
専門の予備校がいくつかあるくらいですので、難易度はかなり高いといえます。独学での合格は不可能に近いでしょう。どの予備校にするか、詳しい人の意見を参考にして選んだほうがよいと思います。ただし、予備校に通っても1年程度での合格は難しいと思います。多くの人は合格までに4-5年の勉強を要しています。