知的財産高等裁判所とは

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知的財産高等裁判所とは

知的財産高等裁判所は「知財高裁」とも呼ばれますが、どんな裁判所でしょうか?
今回は知的財産高等裁判所の概要について説明します。

弁理士おびかね
弁理士おびかね

知財高裁は「ちざいこうさい」と読みます。

知財高裁はどんな裁判所か?

知財高裁は、平成17年に設立された比較的に新しい裁判所です。知的財産に関する事件についての裁判の一層の充実及び迅速化を図るため、に設立されました。知財高裁は、東京高等裁判所の特別の支部です。

知財高裁は、通常部4か部及び特別部(大合議部)からなる裁判部門と、事務局と、が置かれています。通常部はそれぞれ3〜4名の裁判官が担当しており、全体では14名の裁判官がいます。

さらに、知財高裁には,裁判所調査官、裁判所書記官、裁判所事務官が配置されています。加えて、非常勤職員の専門委員(学者、研究者、弁理士等)が事件に関与する場合があります。

取り扱う裁判事件について

審決取消訴訟のすべての一審と、特実意商等の控訴審(二審)は、知財高裁の管轄となります。具体的には以下の通りです。

審決取消訴訟

特許庁が行った審決に対する不服申立てとしての審決取消訴訟は、東京高等裁判所の専属管轄であり、その特別の支部である知的財産高等裁判所が取り扱うことになっています。

民事控訴事件(特実意商等の控訴審)

民事控訴事件のうち、特許権、実用新案権等に関する訴えの控訴事件については、全国のケースすべてを知的財産高等裁判所で取り扱うことになっています。一方、意匠権、商標権等の侵害に係る訴えの控訴事件については、東京高等裁判所の管轄(東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県,茨城県,栃木県,群馬県,静岡県,山梨県,長野県,新潟県)に属するケースのみを知的財産高等裁判所が取り扱います。

大合議について

知財高裁では、原則として裁判官3名の合議体で事件を取り扱いますが、裁判官5名の合議体(大合議体)でも裁判を行うことができます。この大合議は「一定の信頼性のあるルール形成及び高裁レベルでの事実上の判断統一が要請され,その要請に応えるため」に導入されました。

弁理士おびかね
弁理士おびかね

重要な事件について、知財高裁の全体で審理することで、判断を統一するようになっています。

代表的な裁判例(大合議)

大合議で判断された事例は、現在(2023年1月時点)までに14件あります。平均すると年に1件程度のペースです。例えば、以下のような判例があります。

「インクタンク」事件 <平成17年(ネ)第10021号>

特許発明の実施品であるインクジェットプリンタ用インクタンクの使用済み品にインクを再充填するなどして製品化されたいわゆるリサイクル品につき特許権に基づく差止請求権等を行使することが許されるとされた事例

「プラバスタチンナトリウム」事件 <平成22年(ネ)第10043号>

いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの技術的範囲について,物の構造又は特性により直接的に特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在しない場合は,その技術的範囲は,クレームに記載された製造方法によって製造された物に限定されるとした事例

「美容器」事件 <平成31年(ネ)第10003号>

特許発明を実施した特許権者の製品において,特許発明の特徴部分がその一部分にすぎないとしても,特許権者の製品の販売によって得られる限界利益の全額が特許権者の逸失利益となることが事実上推定されるが,特徴部分の特許権者の製品における位置付け,特許権者の製品が特徴部分以外に備えている特徴やその顧客誘引力などの事情を総合考慮すると,事実上の推定が約6割覆滅され,これを限界利益から控除すべきであるとされた事例

庁舎アクセス

 ・住所:153-8537 東京都目黒区中目黒2-4-1
 ・最寄駅:東京メトロ・東急 中目黒駅 徒歩約8分
 ・最寄バス停:東急バス 東京共済病院前 徒歩約2分

終わりに

今回は、知財高裁について、その概要を説明しました。実務的には、大合議事件は、今回紹介したケース以外の事件も重要になってきます。興味のある方は、ぜひ大合議事件について勉強してみてください。

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