特許を取得したい国の決定方法

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知的財産権は各国毎に独立しており、日本で取得した特許権・実用新案権は日本でのみ有効です。そのため、外国に製品を輸出したり、外国で製品を製造する場合には、その国で特許件・実用新案権を取得しておく必要があります。

外国出願を行う場合、具体的に出願国を決める必要がありますが、どのように決めればよいのか、についてご説明いたします。実際には会社ごとにいろいろな戦略があるため、決定方法を一概に言うことはできませんが、ここでは出願国を決定する際の一般的な考慮ポイントについてご説明します。

  1. 貴社がその国に進出中、又は予定があるかどうか(市場可能性の有無)
  2. 特許取得までの費用
  3. 権利取得の難易度
  4. 権利行使の容易さ
目次

(1)貴社がその国に進出中、又は予定があるかどうか(市場可能性の有無)

その国で特許を取りたいという場合、前提としてその国で事業活動を行うかどうかは重要なポイントです。具体的に、その国でその特許製品を販売する、又はその予定があるかどうかです(現地会社が販売することを含む)。さらに、工場をその国に作る予定があるかどうかについても考慮してください。あるいは、ライバル企業の本拠地なども、出願国に含めるかどうか検討したほうがよいでしょう。

  • 製品の販売予定
  • 工場の進出予定
  • ライバル企業の本拠地

(2)特許取得までの費用

一般に、先進国は途上国に比べ、現地代理人の費用・印紙代などが高額です。

また、翻訳代も考慮する必要があります。例えば米国に出願する場合、日本語明細書を英文明細書に翻訳しますが、翻訳した英文明細書は英語圏の他国にもそのまま利用可能(流用可能)ですので、2つ目以降の国分の翻訳コストを抑えられます。一方、例えば中国は中国語、韓国は韓国語に翻訳しますが、他国で利用する汎用性はありません。

なお、特許取得までの費用は、出願ルートによって概ね以下の通りです。

PCT出願の場合:

PCT出願時

  • (A)国内代理人の費用(PCT出願時)
  • (B)PCT出願印紙代

(A)と(B)の合計で約20~30万円です。

国内移行手続き時

  • (C)国内代理人の費用(国内移行手続き時、中間時、登録時)
  • (D)日本語明細書の翻訳費用
  • (E)現地代理人の費用(国内移行手続き時、中間時、登録時)
  • (F)現地特許庁出願印紙代(国内移行手続き時、登録時)

(C)~(F)の合計で約30万円(途上国)~約80万円(ヨーロッパ)です。

直接出願の場合(PCTを経由しない場合):

  • (C)国内代理人の費用(出願時、中間時、登録時)
  • (D)日本語明細書の翻訳費用
  • (E)現地代理人の費用(出願時、中間時、登録時)
  • (F)現地特許庁出願印紙代(出願時、登録時)

※同一符号は概ね同一費用

(C)~(F)の合計で約30万円(途上国)~約80万円(ヨーロッパ)です。

(3)特許取得の難易度

日本で登録になった特許は日本のみ有効で、諸外国にその効力は及びません。このため、外国に特許の効力を有効とするためには、必要とするその国ごとに特許登録を行う必要があるのです。特許登録するかどうかはその国の特許庁が判断します。その特許性判断においては、独自に審査している国と、そうでない国があります。日本は独自に審査している国です。

独自に審査している国においては、日本で登録になったからといっても特許にならない可能性もあります。  

例:米国、中国、韓国、欧州等

一方、他国で登録になったものはそのまま登録を許可する制度の国もあります。このため、このような国の場合、日本で登録になっているものについては、登録される可能が高く、特許取得の難易度は下がります。  

例:タイ、シンガポール、マレーシア、オーストラリア等。

(4)権利行使の容易さ

さらに、権利行使しやすい国かどうか、という点も重要な考慮ポイントです。国によっては権利取得できても、権利行使(差し止め、損害賠償請求)がしにくい国もあります。せっかく権利を取得しても、権利行使しにくかったり、その国に有利な裁判ばかりする国では意味がないです。

権利行使しにくいと、せっかく権利を取っても意味がありません。

まとめ

外国で特許を取得する際に、どういった要素を考慮すればよいかについて解説してきました。

  1. 貴社がその国に進出中、又は予定があるかどうか(市場可能性の有無)
  2. 特許取得までの費用
  3. 権利取得の難易度
  4. 権利行使の容易さ
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