特許の維持費について
特許の維持費について
特許は権利取得までにお金がかかりますが、権利取得後にも権利を維持するためにお金がかかってきます。今回は、特許の維持費について詳しく説明します。
特許取得までの費用
はじめに、特許取得までにかかる費用をおさらいしておきます。
特許取得までには、
庁費用:14000円
弁理士費用:約20万円
庁費用(審査請求印紙代):約15万円 ※1
弁理士費用:約10万円
庁費用:約2万円
弁理士費用:約10万円
※1:減免により1/3~1/2に減額されます。
の3つの段階を経ることになります。
そして、3つの段階ごとに特許庁に支払う費用と、弁理士(特許事務所)に支払う費用と、が必要になってきます。詳細は割愛しますが、通常ですと特許取得までには合計で約50~70万円かかります。(弁理士に依頼しなければ、特許庁の費用だけで済むため、減免を駆使すれば10万円程度で済ませることもできますが、おすすめしません。申請書類の質がイマイチの場合に、適切な範囲の権利を取得できないおそれがあるためです。)
特許の取得後の費用(維持費)
ここからが本題です。維持費です。
特許取得までと同じように、特許の取得後であっても、権利を維持するために、特許庁に支払う費用と、弁理士(特許事務所)に支払う費用と、が必要になってきます。(弁理士に依頼しない場合には弁理士の費用はかかりません。)
特許庁に支払う費用(令和4年4月改正後)
特許庁に支払う費用は、登録から25年までに下記のような料金を支払う必要があります。なお、特許の維持費用は、毎年支払うため、「年金」と呼ばれることもあります。ちなみにこの「年金」は非課税ですので消費税はかかりません。
- 第1年から第3年まで:毎年 4,300円+(請求項の数×300円)
- 第4年から第6年まで:毎年 10,300円+(請求項の数×800円)
- 第7年から第9年まで:毎年 24,800円+(請求項の数×1,900円)
- 第10年から第25年まで:毎年 59,400円+(請求項の数×4,600円)
うーん。式になっているので少しわかりにくいですね。
例えば、具体的に、請求項が5コの場合だと
・第1年から第3年まで :毎年 5,800円(登録時に3年分17,400円を支払う)
・第4年から第6年まで :毎年 14,300円
・第7年から第9年まで :毎年 34,300円
・第10年から第25年まで:毎年 82,400円
ということになります。
あるいは、請求項が10コの場合だと
・第1年から第3年まで :毎年 7,300円(登録時に3年分21,900円を支払う)
・第4年から第6年まで :毎年 18,300円
・第7年から第9年まで :毎年 43,800円
・第10年から第25年まで:毎年 105,400円
ということになります。
この年金のうち、1~3年分だけは3年分まとめて登録時に支払うことになります。4年目以降は、毎年、1年分ずつ支払うこともできますし、複数年分をまとめて支払うこともできます。もちろん、権利を維持する必要がなくなれば、途中で支払いをやめることもできます。
特許権は出願から20年なのに、第25年まで金額が決められていることを不思議に思われるかもしれませんが、これは医薬分野などでは、特許権が最大5年間延長される場合があるためです。通常の特許権では、長い場合でも第20年までです。特許庁での審査に時間がかかってしまうと、15年くらいしかないこともあります。
上に記載したように、特許庁に支払う費用は、はじめは安いですが、少しずつ高くなります。10年目以後には、毎年10万円を超える支払いが必要な場合もあるでしょう。このように少しずつ金額が高くなるのは、要するに「長年にわたって特許権を維持するということは、儲かっているということでしょう。だったら、たくさんお金払ってね。」ということです。国家が、独占権である特許権を保護してくれる代わりにお金がかかるということです。
支払い期限と倍額期間について
ここで、特許の維持費の支払い期限について説明しておきます。特許の維持費は、毎年1年分ずつ支払うこともできますが、数年分まとめて支払うこともできます。ただし、少なくとも前の年には、前もって支払っておく必要があります。例えば、特許権の登録日が4月4日だとすれば、4月4日までに翌年分の維持費を支払う必要があります。仮にこの期限を過ぎてしまっても、6ヶ月以内なら2倍の金額を支払えば権利は消失しません(「倍額納付」と言います)。2倍なので気をつけてください。
弁理士(特許事務所)に支払う費用
一方で、弁理士に支払う費用は割合に低廉な金額のことが多くなっています。一般に、特許の維持費の支払いを弁理士(特許事務所)に依頼した場合には、1万円~5万円の手数料がかかります。これは手続きの代行というよりも、むしろ支払い期限を管理してお知らせするための費用と考えたほうがよいでしょう。支払い期限を過ぎてしまうと、特許権はなくなってしまいますので、この期限を管理しているのです。多くの場合、支払期限の2~3ヶ月前にお知らせしてくれます。
特許の維持費の減免
最近は、特許庁でも、個人事業主や中小企業の発明を奨励する目的で、特許の維持費を減免する制度が充実しています。個人事業主や中小企業は、割引された維持費を支払えばよいのです。具体的には、個人事業主、中小企業、又はスタートアップは、1/2になる減免や1/3になる減免を使うことができます。大企業には減免は適用されません。
例えば、請求項の数が5つの場合は、減免なし、減免あり、で以下のように大きく料金が異なってきます。ここでは1/3減免になった場合で説明します。10円未満の端数は切り捨てになります。
- 第1年から第3年:減免なし=毎年 5,800円 vs 減免あり=毎年 1,930円
- 第4年から第6年:減免なし=毎年 14,300円 vs 減免あり=毎年 4,760円
- 第7年から第9年:減免なし=毎年 34,300円 vs 減免あり=毎年 11,430円
- 第10年から第25年:減免なし=毎年 82,400円 【※減免制度はありません。】
いかがでしょうか?かなりの差になりますね。逆に言うと、減免を利用できる場合に利用しないと大損してしまいます。減免については弊事務所でも数多く扱っているため、お問い合わせください。
まとめ
- 特許取得までに合計で約50~70万円かかる。
- 特許庁に支払う維持費の金額は徐々に高くなっていく。
- 特許事務所に支払う手数料は1回当り1万円~5万円かかる。
- 特許庁に支払う金額は、減免によって1/2や1/3になる場合がある。
↓↓特許にかかわる費用の全体像を知りたい場合にはこちらの記事をご覧ください。