個人で特許申請して拒絶理由を受けたときにどうすればよいか?
個人で特許申請して拒絶理由を受けたときにどうすればよいか?
特許出願(特許申請)して審査を受けると、ほとんどの出願では拒絶理由通知を受けます。つまり、特許庁の審査官から「特許にできない」旨の連絡を受けることになります。ここでは、個人で特許申請して拒絶理由を受けたときに、どのように対応すればよいか、について説明します。
以下の4つの拒絶理由が通知されることが多いです。
- 特許法第29条第1項:いわゆる「新規性違反」です。世の中にすでに同じものがあると、通知されます。
- 特許法第29条第2項:いわゆる「進歩性違反」です。似た技術を組み合わせると本発明になる、という意味です。
- 特許法第36条第6項第1号:いわゆる「サポート要件違反」です。請求の範囲が広すぎる場合に通知されます。
- 特許法第36条第6項第2号:いわゆる「明確性違反」です。請求の範囲が不明確なときに通知されます。
はじめに
特許庁の審査官から拒絶理由通知を受けたときには、どのように対応すればよいでしょうか?一般的に、拒絶理由通知を受けたときには、1)補正書(手続補正書)を提出して特許請求の範囲を補正したうえで、2)意見書において補正の内容や拒絶理由を解消していることなどを説明します。以下では、どのように意見書や補正書を作成すればよいか、について説明します。
拒絶理由通知を受けたら、「意見書」と「手続補正書」を提出して反論します。
審査官の指摘内容をよく理解する
まずは、拒絶理由通知の(備考)をよく読んで、審査官の指摘している拒絶理由を理解することが重要です。拒絶理由通知というのは、審査官からのメッセージですので、審査官が何を言おうとしているのか、しっかりと把握しましょう。一見すると、冷たく感じられる拒絶理由ですが、審査官はロボットではありません。何も拒絶したいから拒絶しているわけではなく、拒絶理由に該当しているから、拒絶しているだけです。
言い換えると、審査官は、引用文献にも、申請した発明と同じ発明が記載されているため、申請した発明を特許権にすることはできない、と言っているだけです。
審査官の指摘の中でも、引用文献の内容(「引用文献1の段落・・~段落・・には、・・ということが記載されている。」等)についての認定の部分を特にしっかりと確認しましょう。この際、素直に審査官の指摘を理解しつつも、本当に引用文献に書かれているのか、と少し疑ってみたほうがよいかもしれません。審査官は、ときどき、自分の都合のよいように引用文献の内容を認定するので、その点には注意してください。
自分の特許請求の範囲を確認する
このステップは、実際には上で説明した審査官の指摘内容を理解するステップと並行して行われると思います。審査官の指摘は、自分の出願の特許請求の範囲の記載に基づいてされますので、自分の特許請求の範囲をもう一度確認しましょう。自分の特許請求の範囲には、こういう表現がされているけど、この表現だと引用文献の内容まで含んでしまう、ということまで把握できれば完璧です。
引用文献と自分の特許請求の範囲の違いを探す
そして、引用文献と自分の特許請求の範囲の記載との違いを探します。ここで違いが発見された場合には、後に手続補正書を作成する必要はなく、意見書のみで反論することも可能になります。しかし、違いはあるにはあるけど、違いが小さくて審査官に認めてもらえるかどうか自信がない場合や、違いがほとんど存在しない場合には、違いを強調する補正を考える必要があるでしょう。
審査官の審査結果は、多くの場合には、もっともなことが書かれています。自分の請求の範囲にきちんと自分の発明が表現されているか、もう一度よく確認してください。
補正の方針を考える
違いがない場合や、あっても小さい違いしかない場合には、補正をすることになります。このとき重要なのは、補正は明細書に記載された範囲でしかできない、ということです。明細書の記載をそのまま持ってくるか、そのままでなくても、ほとんど記載されているに等しい事項しか持ってくることはできません。ただし、構造系の場合であれば、図面に記載されている事項であれば、ある程度は許容されるかもしれません。
実際に意見書と補正書を書く
実際に意見書と補正書を書いていきます。意見書や補正書には、定められた様式があるため、最低限の様式に沿って記載する必要があります。(意見の内容)の部分は、自由に記載してよいことになっていますが、以下の項目に沿って記載することがよいです。
- はじめに
- 本願発明の内容
- 補正の根拠
- 引用文献の内容
- 引用文献との比較
- むすび
まとめ
今回は、どのように意見書や補正書を作成すればよいか、について説明しました。繰り返しますが、しっかりと審査官の指摘内容を理解したうえで適切な反論・補正をすれば、高い確率で特許権を取得することができます。「拒絶理由」という、いかめしい名称ですが、審査官とのコミュニケーションの手段だと思って対応してください。