ハーグ制度(ハーグ条約)をわかりやすく解説

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ハーグ制度とは?

外国で意匠権を取得する際には、ハーグ制度(ハーグ条約)を利用する場合があります。今回は、ハーグ制度について詳しく説明したいと思います。

一言で言うと、ハーグ制度(ハーグ条約)とは

ハーグ制度

1つの意匠出願手続きを国際事務局(WIPO)へ行い、国際登録することで、複数の指定国に出願した場合と同等の効果が得られる制度

です。

ハーグ制度(ハーグ条約)の現在の加盟国は、77の国と地域があります(2022年5月には中国も加盟)。世界全体のハーグ意匠出願数は6,711件で、うち日本からのハーグ出願は421件(2021年)です。

弁理士おびかね
弁理士おびかね

特許で言うところのPCTですね。

出願期限

ハーグ制度(ハーグ条約)を利用する場合、通常は日本での意匠出願を基礎として優先権主張します。このように優先権主張をする場合は、優先日(=日本での意匠出願の出願日)より6ヶ月以内に出願する必要があります。

ハーグ制度のメリット

  • 出願時に各国での現地代理人が不要となる=費用節約
  • 1つの言語・様式での願書作成でよい=手続きの簡素化
  • 登録後の権利管理もWIPOが一括管理
  • 迅速な審査(国際公表から6ヶ月又は12ヶ月以内に審査がされ、指定官庁が拒絶理由を発見した場合、WIPOに対して通報しなくてはいけない。審査が遅い国もこのルールに沿う必要があるので、早く結果が出る。)

代理人が不要なので安く済みます。(拒絶理由が発生した場合には代理人が必要となります。)

弁理士おびかね
弁理士おびかね

拒絶理由通知がない場合に、代理人の指定が不要となるのは大きなメリットです。そもそも実体審査が無い国も多いので、ハーグ出願のメリットはきわめて大きいといえます。

ハーグ制度のデメリット

  • 出願は英語(又はフランス語, スペイン語)でなくてはいけない。そのため、特許事務所に依頼するのがベター。
  • 質問等があった場合、ケースにもよるがWIPOへ英語で問い合わせる必要がある(場合によってはメールではなく電話での対応が必要なこともある)。
  • ハーグ協定に加盟している国のみを指定できるので、それ以外の国の場合はハーグ出願ではなく、各国へ直接出願する必要がある。

英語なのが少し面倒ですが、大きなデメリットは見当たりません。

登録までの流れ

STEP
国際出願

・2パターンの出願方法がある。
(1)WIPOへ直接出願(eHagueを使用したオンライン出願)
(2)日本特許庁を通じた間接出願(書面(紙)での出願)
(※現在は99.7%がeHague出願)
・原則として国際出願をWIPOが受理した日が国際出願日となる。(JPOを通じて行った場合は、JPOが受領した日)
・国際出願後、1週間程で方式審査が行われ、不備があれば、不備通知(Irregularity letter)が出される。(応答期間:3ヶ月)

STEP
国際登録

・方式審査を経て問題がなければ、国際登録となる。

原則として国際登録日=国際出願日となる。

・国際登録となると国際登録証が発行される。現在はPDFのみ。郵送はない。

STEP
国際公表

・原則として国際登録日から12ヶ月経過後にWIPOのHP上で公表される。(毎週金曜日に公表)

(即時公表、12ヶ月より早い時期の公表、公表の延期も請求できる。出願後の即時公表も可能)

※延期を請求する場合、出願日から30か月を超えない範囲で請求(優先権主張している場合は、優先日からカウント)

※指定国によっては、公表の延期を認めない国もあるので、その場合、延期期間が短い方に合わせて公表される。(延期する場合は各国のルールを確認すること。)

STEP
指定国に登録設定

国際公表日から6ヶ月又は12ヶ月以内に審査がされ、各指定官庁より拒絶の通報がなければ登録となる。

(主に実体審査がある国(例えば、中国、日本、米国、韓国)は12ヶ月のことが多い。審査がない(EU等)は6ヶ月)

登録になった場合は、保護付与の声名(Statement of Grant of Protection)を発行する国と発行しない国があるので注意!(例えば、中国、日本、米国、韓国、EU(欧州連合)は発行するが、シンガポール、ベトナム等は発行しない)

※なお、拒絶通報があった場合には、各国の現地代理人を選任し、現地代理人を介して応答する必要がある。

STEP
国際登録の更新

・WIPOにて一括管理が可能。(=各国で手続する必要なし)

・国際登録の効果は、国際登録日から5年で、5年毎に更新可能。各指定国の最長保護期間まで、権利を存続させることができる。

ハーグ制度(ハーグ条約)を使えば、審査はかなり早くなります。

eHague出願とJPOを通じて行う間接出願の違い

eHague出願の特徴

・形式上のミスはオンライン上でチェックをしてくれる。(出願日が繰り下がるようなミスはできないようになっている)
・クレカ決済可能(銀行送金、Paypal、WIPO予納口座引き落としも可能)
・提出書類の即時受理
・料金計算の簡素化
・WIPOの通知がオンラインで受理可能
・出願の状況をリアルタイムで確認ができる
・不備通知もeHague上で対応可能
・複数の複製物を出願する場合、書面の出願よりも手数料が安くなる。
・質問等があった場合、ケースよるがWIPOへ英語で問い合わせる必要があり。(場合によってはメールではなく電話での対応が必要なこともある。)

JPOを通じて行う間接出願の特徴

・不明点があれば日本語で問い合わせが可能。
・費用がeHagueより高い。
・審査の進み具合がeHagueより少し遅い。(6~12週間手続に時間がかかる。)

99%以上がeHagueを使っています。eHague を使いましょう。

ハーグ制度にかかる費用

以下に示す3つの手数料(庁費用)がかかります。

1)       基本手数料:397スイスフラン(1意匠につき) 

(※ 意匠の追加は1意匠ごとに19スイスフラン)

2)       公表手数料:1複製物ごとに17スイスフラン 

(※ 紙出願の場合は2ページ目以降、追加ページごとに150スイスフラン)
※ 追加手数料:(意匠の説明が100単語を超えた場合)101単語以降1単語ごとに 2スイスフラン
※ 他、JPO経由の場合、送付手数料(1件3,500円)がかかる。

   複製物=図面 です。

3)  指定手数料(出願手数料+5年分の登録料):

(a) 標準指定手数料:
等級1:42スイスフラン(1意匠目)、2スイスフラン(2意匠目以降、1意匠ごとに)
等級2:60スイスフラン(1意匠目)、20スイスフラン(2意匠目以降、1意匠ごとに)
等級3:90スイスフラン(1意匠目)、50スイスフラン(2意匠目以降、1意匠ごとに)

(b) 個別指定手数料: 
各指定国が指定した額 (例えば、米国、EU等)
(※ 米国とメキシコは2段階納付なので、登録時に別途費用が発生する)
※ 指定手数料に関しては、指定する国が(a)又は(b)どちらに該当するのか、また等級等はWIPOのHPにて確認ができます。

例えば、・・・

国際意匠出願1件を出願した場合の出願費用:
 (条件:1意匠、複製物7つ、2ヵ国(中国とシンガポール)、eHague経由の出願
弊所手数料:150,000円+税
送金手数料:5,000円+税
WIPO基本手数料:約58,419円(397CHF)
公表手数料:約17,511円(17CHF×7複製物=119CHF)
標準指定手数料(中国):約88,731円(603CHF)
個別指定手数料(シンガポール=等級1): 約6,180円(42CHF)

合計:約325,841円+税  (2022年10月時点レートで)
(※上記は、拒絶費用及び更新費用を含まない金額です)

<支払い方法>
WIPOに対して行える支払い方法は3つ。
1)WIPO予納口座からの引き落とし
2)銀行送金
3)クレジットカード、Paypal(オンラインのみ)

ハーグ制度を利用する際の注意事項

  • 意匠の不十分な開示に関する拒絶理由が多いので注意すること
    • 製品の全体構成についての開示が不十分な場合
    • 複製物(図面)の一部が不明確な場合
    • 製品の形状が不明確な場合 例)凹凸形状が不明確(どちらが出ている?)
    • 一の意匠において複数の異なる形式の複製物(図面)が存在する場合 例)白黒とカラー
  • 意匠の単一性の要件に関する拒絶理由が多いので注意すること(実体審査国ごとに単一性要件が異なる)
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