知的財産権の侵害をわかりやすく解説
知的財産権の侵害をわかりやすく解説
皆さんは「知的財産権」について聞いたことがあると思います。今回の記事では、知的財産権を取ることで得られる基本的な効果に基づく-「侵害」について-初心者の方にもわかりやすく説明します。
知的財産権の種類
はじめに、おさらいから。知的財産権には大きく分けて「産業財産権」と「著作権」の2つがあります。このうち、産業財産権はさらに下記の4つに分けられます。
- 特許権:技術的な思想である「発明」を保護します。
- 実用新案権:技術的な思想である「考案」を保護します。
- 意匠権:デザインを保護します。
- 商標権:商品名やサービス名を保護します。
これらの産業財産権は特許庁の管轄であり、特許庁に申請して審査を通る必要があります。
著作権は、下記のような権利(支分権)の集まりです。
- 著作権(著作財産権)
- 複製権/上演権/公衆送信権/貸与権/翻案権/二次利用の権利など
- 著作者人格権
- 公表権/氏名表示権/同一性保持権
著作権は、文化庁の管轄であり、権利は創作と同時に発生します。文化庁に申請する必要はありません。
知的財産権の侵害とは
産業財産権の侵害とは
ここでは代表的な特許権の侵害について説明します。特許権の侵害とは、特許発明(権利になっている発明)を、特許権者の許諾なく、業として実施することを意味します。
裁判例では、上の要件は具体的に以下の3つの要件に小分けされます。3つの要件すべてを満たすと「侵害」となります。
1.特許発明の技術的範囲に含まれること。
この技術的範囲は、出願書類のうち特許請求の範囲に記載されます。特許請求の範囲は文章で記載されています。訴訟で争点になりやすいポイントです。
2.「業として」の実施であること。
「業として」とは、実施の行為が個人的なものではないことを意味します。自宅で個人的に、趣味的にやっていることまでは特許権は及びません。
3.実施行為に該当すること。
実施行為としては、生産、使用、譲渡、輸出、輸入があります。輸出は日本から外国への輸出です。輸入は外国から日本への輸入です。
産業財産権を侵害されたら、どうすればよいか?
以下のような手段をとることができます。
- 差止請求をする:行為を止めさせることができます。
- 損害賠償請求をする:お金をもらうことができます。
- 不当利益返還請求をする:お金をもらうことができます。
- 信用回復措置請求をする:謝罪広告の掲載を求めるこことができます。
著作権の侵害とは
著作権の侵害とは、私的利用の範囲を超えて、他人の著作物を許可なくコピー(複製)したり、配信、上映、改変したりする行為をいいます。
裁判例では、上の要件は具体的に以下の4つの要件に小分けされます。4つの要件すべてを満たすと「侵害」となります。
1.著作物であること
著作権法第10条には著作物の例が列挙されています。
「言語の著作物、音楽、舞踊又は無言劇、美術の著作物、建築、図形の著作物、映画、写真、プログラム」のいずれかに該当していれば著作物となり得ます。
2.著作権があること
日本国民の著作物であれば、著作権があるものと解されます。権利期間は、著作者の死後70年間です。
3.著作権が及ぶ範囲で利用されたこと
複製、上演、上映、頒布、譲渡等をすることは、著作権が及ぶ範囲です。
問題となることが多い「複製」については、依拠性があること(つまり、知っていて真似していること)、類似していること、の2つを満たす必要があります。
また、私的な複製や引用の場合には、著作権が及ばないことになっています。
4.利用者が著作物を利用する権限を持っていないこと
当たり前ですが、権利者から許諾を得て複製権や公衆送信権を持っている場合には、侵害にはなりません。
著作権を侵害されたら、どうすればよいか?
以下のような手段をとることができます。
- 差止請求をする:行為を止めさせることができます。
- 損害賠償請求をする:お金をもらうことができます。
- 不当利益返還請求をする:お金をもらうことができます。
- 名誉回復措置請求をする:謝罪広告の掲載を求めるこことができます。
まとめ
知的財産権の「侵害」について説明しました。
- 特許権の侵害とは、特許発明(権利になっている発明)を、特許権者の許諾なく、業として実施することを意味します。
- 著作権の侵害とは、私的利用の範囲を超えて、他人の著作物を許可なくコピー(複製)したり、配信、上映、改変したりする行為をいいます。