特許協力条約(PCT)とは?弁理士がわかりやすく解説
はじめに
特許について調べていると、外国への出願を検討する際に、「PCT」や「特許協力条約」という言葉が出てきます。今回は特許協力条約(PCT)について、弁理士がわかりやすく説明します。
制度の概要
まず「PCT」は、特許協力条約(Patent Cooperation Treaty)の略です。PCTは、日本語では国際出願と言うこともあります。このPCTは、外国で特許権を取得するための手続きを簡素化することを目的としています。
具体的には、PCTは、1つの国際出願をすることで、全世界に「出願」したことにしてくれる制度です。PCTがなかった時代には、各国ごとに出願する必要がありました。権利をとりたい国の数だけ、出願をする必要があったのです。
一方、PCTがあれば、日本の特許庁にたった1つの出願をすることで、すべての加盟国に出願したことにしてくれる、ということなのです。何ヶ国で権利化を目指す場合であっても、出願自体は1つで済むため、手続きが大幅に簡素化されたことになります。
例えば、PCTがなければ、20ヶ国で権利化する場合には、国ごとに20コの出願をし、さらに国ごとに翻訳文を準備する必要がありました。各国ごとにフォーマットが異なるため、かなり大変な作業です。
一方、PCTがあれば、20ヶ国で権利化する場合でもたった1つの出願をすればよいのです。しかも、日本の特許庁に日本語で出願できるため、作業量に換算すると1/20以下になるでしょう。
PCT出願のメリット
- メリット0:手続きが簡素化される
-
PCT出願の制度自体です。1つの国際出願をすることで、全世界に「出願」したことにしてくれます。
- メリット1:期限ギリギリでも日本語で出願できる
-
日本語で作成した申請書類を日本特許庁に提出することによって、PCT加盟国すべてに出願したことになります。翻訳する必要がないため、期限ギリギリでも出願できます。
- メリット2:手続きの大部分を日本の特許庁に対して行うことが可能
-
ほぼすべての手続きを、日本の特許庁に対してすることができます。したがって、日本語でやり取りできますし、ミスがあっても、日本特許庁から電話や指令がかかります。
- メリット3:優先日から30か月の猶予期間がある
-
直接出願ルート(パリルート)であれば、優先日から12か月以内に各国に出願する必要がありますが、PCT出願であれば、優先日から30か月以内に各国へ移行すればよいです。18か月も猶予期間が延びます。
- メリット4:国際調査報告を受けとることができる
-
国際的な統一基準で作成された国際調査報告や見解書を受け取ることができます。特許取得の可能性を検討しやすくなります。
PCT出願のデメリット
- デメリット:特になし
-
制度的なデメリットはありませんが、移行国数が少ない場合には、直接出願ルート(パリルート)と比べて費用が高くなる傾向にあります。具体的には、2か国以下の国に移行する場合には、コストが高くなることが多いようです。
手続きの流れについて
PCT出願から各国への国内移行までは、以下のような流れになります。
日本語で、様式に沿った出願をすることで、加盟国すべてに出願したことになります。
新規性・進歩性の判断が示されます。19条補正(請求項のみ補正可)できます。
国際的に公開されます。
国際予備審査を請求すれば34条補正(請求項+明細書を補正可)できます。
翻訳文を添えて、各国へ国内移行します。
各国への移行について
国際出願を提出しただけでは、その出願が各国の実態審査にかかることはありません。そのため、特許権が付与されることもありません。
出願人は、条約で定められた期間内(通常は優先日から30か月以内)に、各国の国内段階の手続きへ係属させる手続き(国内移行手続)が必要です。
具体的には、以下の手続きが必要です。
- 翻訳文の提出
- 国内手数料の支払い
- 国際出願の写しの提出(必要ない場合あり)
なお、国内移行の期限は、ほとんどの国で30か月ですが、31か月、32か月を設定している国もあります。
まとめ
PCTを使用することによって、出願者は、各国で異なる言語、規則、手続きについての知識が必要なくなり、出願に関する手続きを簡素化できます。
ただし、PCT出願は特許の取得を保証するものではありません。各国の特許庁は、PCT出願の後、その国の特許要件に従って出願を審査し、承認するかどうかを決定します。
PCT出願の費用については下記の記事をご覧ください。