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特許を権利化する上で大事な要素として「進歩性」が挙げられます。
しかし、特許以外では聞くことのないこの「進歩性」をちゃんと説明できるかというと、しっかりと説明できる人はあまりいないのではないかと思います。
今回はこの「進歩性」についてわかりやすく解説していきます。
特許を受けるための要件というのはいくつかあって、その中でも大きな要素となるのが「新規性」と「進歩性」となります。
新規性というのは今までにあったものと同じではないということで、まったく同じものがなければクリアできる項目となります。
新規性はわかりやすいとは思うのですが、進歩性となるとあまり特許以外の業界では聞かない単語なので、説明が必要になってきます。
進歩性を言葉で説明すると、
進歩性
発明が、先行技術に基づいてその技術分野の専門家が容易に成し遂げることができたものではないことをいう。
となります。
要は「従来ある技術から簡単に思い付かないもの」というのがざっくりとした説明になります。
そこで気になるのが、どのくらいからが簡単で、どのくらいの技術なら簡単ではないとなるかですね。
それは、その技術分野での一般的な知識を持った架空の「当業者」を設定し、その人が容易に考えつく技術かどうかで進歩性が判断されます。
進歩性を判断する上で審査の際に実際に行われるのが引用文献との対比判断になってきます。
具体例を挙げると
課題:スマートフォンの画面にほこりがつきやすい
発明:スマートフォンの表面材料に帯電防止剤を混ぜる
という発明をしたとします。
そこで検索したところ出てきた文献が
文献A:スマートフォン
文献B:タッチパネルの表面材料に帯電防止剤を混ぜ込む技術
が最も近い文献として出てきたとします。
この場合であれば、新しくできたスマートフォンの文献に帯電防止剤の記載はないものの、タッチパネルのほこり付着防止に帯電防止剤をつかうことを組み合わせることは容易であるとして、進歩性の主張は困難となると考えられます。
もしも、スマートフォンだから特別な製造方法が効果が高かったり、特殊な帯電防止剤が特別に良いというような、更なるプラスαの改良要素があるならば
発明:スマートフォンの表面材料に帯電防止剤を混ぜる+α
の構成であれば進歩性を主張できる可能性が出てくると考えられます。
このように大きな構成としてはすでに先行文献があり、進歩性の主張は困難だとしても、実際に組み合わせた時に単純には上手くいかないような問題があるのであれば、そこで発生した問題を解決するためになされた工夫については進歩性が認められる可能性があります。
そのため、しっかりと権利を取得するためには、実際にその製品をつくったときに具体的に発生した新しい問題と、その問題を解決するための方法を細かく書いておくことが、引例が出てきたとしてもどこかで権利化させるための有効な手段になってくるのです。
出願をする際には、大きな要素だけを書くのではなく、こんなことをすればここが良くなる、こんな問題に対してはこうすれば解決できるといったことを、出願時でできるだけ書いておくことが大事になってくるので、メインの実施例だけでなく、その他の変形例、応用例もできるだけ盛り込んでおきましょう。
発明を権利化するために大事な要素となる進歩性。
進歩性を主張するためには従来の文献からでは簡単に思いつかないことを主張することが大事になるので、今までの技術を組み合わせるだけでは簡単にはできなかったことを具体化することが大事になります。
そのためには実際に作るために新しく必要になった要素や、細かい応用例が役に立ってくるので、出願時にはできるだけ具体的な要素を盛り込んでおくことが大事になります。
進歩性をしっかりと主張できる明細書にするためにも、出願時の明細書を充実させて、予想外の引例にも対応できるように準備をしていきましょう。