審査基準を理解すれば進歩性が肯定される!
審査基準を理解すれば特許を取得しやすくなる!
前回に続いて、今回も審査において最も重要度の高い特許の「進歩性」の審査基準について、どのような視点で対応すればクリアできるかについて解説します。今回の「その2」では、「進歩性が肯定される方向に働く要素」について解説します。
この「進歩性が肯定される方向に働く要素」は、要するに「権利化できる理由」について説明していますから、ここに挙げられている内容を主張できれば、権利化できることになります。
進歩性が肯定される方向に働く要素
審査基準には、「進歩性が肯定される方向に働く要素」として次の2つの要素が挙げられています。
- 引用発明と比較した有利な効果
- 阻害要因
以下では、これらの2つの要素について説明します。
引用発明と比較した有利な効果
引用発明と比較した有利な効果が、顕著なものであることは、進歩性が肯定される方向に働く有力な事情になります。具体的には、以下の場合に進歩性「あり」となります。
- 発明が、引用発明とは異質な効果を有する場合
- 発明が、引用発明と同質の効果であるが、際だって優れた効果を有する場合
したがって、反論としては「異質な効果を有するので、進歩性を有する」とか「際だって優れた効果を有する」といった主張をすることになります。効果を主張する際には、構造(構成)の相違点があることが前提ですので、必ず構造(構成)の相違点があることを主張したうえで、効果も相違していることを主張することがよいでしょう。
ただし、これらの効果は、明細書に記載されているか、又は、構造等から推測されている必要があります。したがって、明細書には、ささいなものでも効果をしっかりと記載しておくべきです。たとえ構造等から推測できる効果であったとしても、明細書に記載しておけば、より説得力が増すので、出願時の明細書に効果をたくさん記載しておいたほうがよいと思います。
阻害要因
引用発明Bを引用発明Aに適用することを阻害する事情があることは、論理付けを妨げる要因(阻害要因)として、進歩性が肯定される方向に働く要素となります。
審査基準には、具体的には、以下の場合に阻害要因がある、とされます。
- 発明の目的に反するものとなる場合
- 発明が機能しなくなる場合
- 発明がその適用を排斥している場合
- 発明が達成しようとする課題に関して、作用効果が他の実施例より劣る例として引用発明Bが記載されている場合
したがって、いずれか1つでも当てはまるものがあれば、これを主張することができます。反論としては、例えば、「発明Bを発明Aに適用すると、発明Aが機能しなくなります。つまり、・・・阻害要因があります。」とか「発明Aは発明Bを劣る例として記載しています。したがって、・・・阻害要因があるものと考えます。」といった主張になります。
まとめ
今回は、特許・実用新案審査基準において「進歩性が肯定される方向に働く要素」に関して、どのように主張すべきか、明細書にどのように記載するべきか、について説明しました。前回と同様、主張する際には、決して独りよがりな主張になってしまうことがないように、審査官の指摘をしっかりと受け止めたうえで論理的な反論をすることが重要です。
審査基準については以下の記事(その1;その3)も参考にしてください。