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実用新案は意味がないのか?
よく「実用新案は意味がないから、特許の方がいいよ。」と言われますが、実際のところはどうなのでしょうか?今回は実務家としての観点から、本当に実用新案は意味がないのか、について説明したいと思います。

特許と実用新案の比較
まず、実用新案と比較されるのは特許ですので、特許との比較を考えたいと思います。
実用新案が優れている点
特許と比べて実用新案が優れている点はどこでしょうか?特許と比べて、実用新案は以下の点で優れています。
無審査であり、ほぼ100%登録になる点
実用新案は無審査なので、ほぼ全ての案件が登録(権利化)になります。特許では50%くらいです。

登録までの期間が短い点
特許では1年近くかかりますが、実用新案だと6ヶ月未満で登録になります。かなり早いです。
費用が安い点
概算の費用は、特許では総額50万円〜60万円かかるのに対して、実用新案だと総額30万円です。半額です。
実用新案が劣っている点
特許と比べて実用新案が劣っている点はどこでしょうか?特許と比べて、実用新案は以下の点で劣っています。
権利行使しにくい点
実用新案権は、実用新案技術評価書を請求して、特許庁から良い評価(進歩性がある)を受けた後でなければ、権利行使できません。これをやらずに権利行使してしまうと、逆に損害賠償を請求されるおそれがあるからです。この実用新案技術評価書は、6万円程度の印紙代で特許庁に請求できます。

アピール力が弱い点
やはり、特許と比べると、アピール力が弱いです。したがって、宣伝文句として使用する場合には、できれば特許の方が望ましいでしょう。ただし、実用新案であっても、知財が何もない場合と比べると雲泥の差です。
実務家としての意見
次に、実務家として、本当に実用新案は意味がないのか、について検討してみます。
特許と比べて、実用新案が劣っている、とされるのは、要するに《権利行使しにくい》という点に集約されます。

確かに、実用新案の場合には、権利行使の前に実用新案技術評価書で良い評価をもらう必要があります。しかし、このことは本当にデメリットでしょうか?
これを逆から言うと、要するに《実用新案技術評価書で良い評価をもらえばよい》のです。では、良い評価を得るためには、何をすればよいのでしようか?
まずは実用新案の出願において、明細書と呼ばれる考案の内容を開示する書類に、なるべく詳しく技術を開示します。そして、第三者が見たときに『進歩性があるかもしれない。』と思わせればよいのです。そうすれば、第三者が侵害しようとしたときに、実用新案を見て躊躇します。真似しにくくなります。

逆の立場から
次に、侵害する側の立場に立って考えてみます。侵害する側からすれば、実用新案権であっても、侵害はしにくい、といえます。なぜならば、たとえ実用新案であったとしても、実用新案技術評価書で良い評価を得ることができれば、権利行使できるからです。
弁理士の立場からすれば、クライアントから「邪魔な実用新案があるのだけど、実用新案だから真似してもOKですよね?」と言われても、すんなり「OKですよ」とは言えません。実用新案の書類の中身を見たうえで、本当に進歩性がないのか等について検討しなければなりません。

このように、実用新案権であったとしても、一定の牽制効果は十分にある、と考えられます。つまり、実用新案は意味がない、ということはないと思います。
まとめ
- 実用新案は、権利化までスピードが速く、安上がりである。
- 実用新案は、権利行使しにくい。
- 実用新案は意味がない、はウソ。実用新案は意味がある。
実用新案を積極的に活用しましょう。実用新案の具体的な活用例を知りたい方は以下もどうぞ。
「実用新案の具体例」
