実用新案と特許の違いについて解説
実用新案と特許の違いについて解説
よく「実用新案」という言葉を聞きますけど、「実用新案」とはどういうものでしょうか? 今回は最近よく耳にする「実用新案」について、主に特許との違いの観点から解説します。
実用新案と特許は似ている点もありますが、大きく異なる点があります。
実用新案とは
実用新案は、正式には『実用新案権』と表現したほうがよいでしょう。文字どおり、実用新案に関する権利ということです。この実用新案権とは、物品の形状、構造または組み合わせに係る考案を保護するための権利です。そして、実用新案権を持っており、さらに一定の条件を満たせば(後述の(4)をご覧ください)、特許と同じように技術を独占することができます。
うーん。余計にわからなくなってきましたね。すみません。わかりやすく言うと、実用新案は、特許と似ている制度ですが、特許よりも簡単な発明(=「考案」といいます。)を保護する制度になっています。
実用新案と特許の具体的な違いは?
では、実用新案と特許はどのように違うのでしょうか?実用新案と特許は、次に説明するように大きく分けて4つの違いがあります。
- 保護対象の違い
- 審査の有無
- 権利期間の長さの違い
- 権利行使の手順の違い
以下に各項目について説明します。
(1) 保護対象の違い
保護できる対象が違います。つまり、それぞれで守備範囲が違います。特許は基本的に技術であれば何でも保護します。一方で、実用新案は高度な技術は保護しません。具体的に言うと、実用新案は、方法を保護しない、化学物質を保護しない、という2点で特許と異なります。方法や化学物質は特許制度で保護することになります。
(2) 審査の有無
特許は審査を経て権利(特許権)になります。そのため、申請しても、半数は権利になりません。一方で、実用新案には審査がありません。実用新案では、審査を経ずに登録されます。したがって、実用新案では、ほぼ100%登録になります。(『ほぼ』としたのは、保護対象に違反するなどして、申請が却下される場合があるためです。)さらに、権利化までの手数料や庁費用は、特許が約50万円かかるところ、実用新案だと審査の手続きが無いため約25万円ですみます。
(3) 権利期間の長さの違い
特許は申請から最長で20年の間に発明を独占できる権利です。一方、実用新案は申請から最長で10年の間に考案を独占できる権利です。つまり、特許と比べると、実用新案は半分の期間だけ保護されます。
(4) 権利行使の手順の違い
特許であれば、権利化後に侵害行為を発見すれば、すぐに権利行使(警告、差止請求など)できます。一方、実用新案だと、権利化後に侵害行為を発見しても、すぐには権利行使できません。まずは「実用新案技術評価書」を特許庁に対して請求し、その実用新案技術評価書において肯定的な評価を得たうえで、権利行使することが必要です。これは(2)で説明したように、実用新案は審査されずに権利になっているため、権利行使するときに審査を受けてください、ということです。したがって、肯定的な評価を得ることができない場合には、権利行使できません。
実用新案の活用について
実用新案と特許の違いはわかったと思うのですが、その違いを知財戦略(出願戦略)にどのように活用していけばよいでしょうか?個人的には、やはり、特許だと進歩性の要件をクリアして権利化できる可能性が5割以下の場合に、実用新案が適していると考えます。なぜなら、特許制度を利用すると権利化できない場合には、何も残らないからです。
その点、実用新案であれば、(権利行使できないかもしれないですが)確実に権利化できます。そして、実用新案権になってしまえば、少なからず他者に対する牽制効果は残せます。ただし、その場合でも、実用新案の明細書は、特許と同じくらいにしっかりと記載することで、他者が明細書を見ても「進歩性があるかもしれない」と思わせることが重要です(技術評価書で肯定的な評価を得られる可能性も高くなります)。
まとめ
今回は、実用新案について、制度の概要について説明しました。特許とは守備範囲が異なることが理解できたでしょうか。また、特許との4つの違いについも理解できたでしょうか。
- 保護対象の違い
- 審査の有無
- 権利期間の長さの違い
- 権利行使の手順の違い
特許と実用新案のそれぞれの違いを理解したうえで、実用新案も積極的に活用しましょう。