国際特許とは

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国際特許とは

最近、世間で『国際特許』という言葉を耳にしますが、はたして『国際特許』とは一体どういうものでしょうか? 今回は、『国際特許』について解説いたします。以下に説明しますように、『国際特許』という制度は存在しません!似た言葉として「国際出願」があります。国際出願はPCT(Patent Cooperation Treaty)とも呼ばれます。

弁理士おびかね
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「国際出願」は「こくさいしゅつがん」と読みます。

目次

国際特許とは

国際特許は存在しない!

『国際特許』というと、皆さんはどのようなイメージを持たれるでしょうか?おそらく『国際的な1つの特許権で、すべての国で有効なもの』を思い浮かべるのではないでしょうか。

国際特許が「1つの権利で、国際的に全ての国で通用する特許」というイメージをお持ちなら、そのような「国際特許」という制度は存在していません。

結論から言うと、そのような国際的に統一された1つの特許権は存在しません。その意味で『国際特許』は存在しません。

弁理士おびかね
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「国際特許」はありません。

では世間で『国際特許』という言葉が出回っているのはなぜでしょうか?

これは『国際特許』に似た言葉として『国際出願』という制度は存在していることに起因しています。ここで注意して欲しいのは、この『国際出願』は、文字通り『出願』についての制度であることです。では次に、国際出願について説明します。

国際「特許」はないが、国際「出願」はある。

国際出願について(国際段階)

では『国際出願』とは、どのような制度でしょうか。簡単に言うと、この国際出願は、『複数の国々への出願の束』です。

弁理士おびかね
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数多くの出願を束ねているイメージです。

つまり、1つの国際出願をすることで、複数の国々に出願したのと同じような効果が生じます。なお、この国際出願は、日本の特許庁を経由して提出することもできます。しかも、ありがたいことに日本語の書類でOKです。ちなみに、この国際出願は特許協力条約(PCT; Patent Cooperation Treaty)に基づいています。特許協力条約は、主要な国のほとんどが加盟しています(台湾は未加盟)。

ただし、何度も言いますが、この『国際出願』という制度は、『出願』についての制度であることに注意してください。つまり、国際出願をしただけでは、『出願』しただけであり、その後に各国で審査を受けて権利を取得するためには、別の手続きが必要です。この各国で審査を受けるための手続きを『国内移行』と言います。

国内移行(国際段階から国内段階へ)

手続き

上で説明したように、国際出願した後に、各国で権利を取得するためには、『国内移行』の手続きをする必要があります。各国の代理人(外国人)に連絡して、その国で手続きを進めてもらうように依頼します。各国の代理人は、その国の特許庁に対して書類を提出して審査を進めるように請求することになります。この書類を(日本では)「国内書面」と言います。

弁理士おびかね
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「国内書面」は、通常の出願で言うところの「願書」に相当します。

なお、移行する国(や地域)は、加盟国の中から出願人が選ぶことができます。国際出願した時点で、一旦、すべての加盟国に出願したのと同じ効果がありますが、その後に審査を受ける国は自分で決められるようになっているわけです。

翻訳文を準備

さらに、各国で審査を受けるためには、その国の言語への翻訳文を準備・提出する必要があります。各国の審査官が審査したり、権利を設定したりする際に、その国の言葉でないと不便ですよね。例えば、日本語で国際出願して、米国で権利を取得する場合ですと、日本語から英語への翻訳が必要になります。原則として国際出願(通常は日本語で作成されている)の出願書類(申請書類)すべてを翻訳することになります。

弁理士おびかね
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翻訳を翻訳会社に依頼するとけっこうなお金がかかります。一般的に、英語1ワードにつき20円はかかります。

期限

国内移行の手続きには、期限が定められています。多くの国々では、日本の出願日から30ヶ月が期限になっています(一部の国や地域では、31ヶ月が期限になっています)。この期限を過ぎてしまうと、出願が取り下げられたものとみなされます。

弁理士おびかね
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30か月 = 2年6か月 ですね。

各国での審査(国内段階)

国内移行の手続きがされると、その後は、各国での通常の審査の流れになります。例えば、審査請求をした後に、実体的な審査を受けることになります。この審査では、日本での審査と同様に、「新規性」や「進歩性」について審査されます。このやり取りは、各国の特許庁と現地の代理人の間で行われますが、現地の代理人を経由して日本の出願人や弁理士に報告されます。

まとめ

要点を箇条書きにすると以下のようになります。

  • 「国際特許」は存在せず、「国際出願」が存在します。
  • 「国際出願」は、出願の束です。
  • 国内書面と翻訳文を提出すると国内段階になります(「国内移行」)。
  • 国内移行後は、各国で通常の審査を受けます。

もちろん、弊事務所パテントボックスでも、「国際出願」を扱っております。英語があまり得意ではないお客様には、各国とのやり取りを代行しています。(翻訳もいたします。)

弁理士おびかね
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弊事務所は外国関連も得意としています。

国際出願(PCT)の費用については、以下の記事をご覧ください。

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